今から35年ほど前、「花とゆめ」は漫画文化の一つの頂点を極めていました。
少女漫画の枠に収まらない数々の傑作たちで、巻頭から巻末までがびっしり埋め尽くされていたのです。
その中において、明智抄先生の作品はけして四番バッターではありませんでした。
どちらかというと人気は少ない方だったと思います。
けれどその独特な世界観と予測不可能なストーリー、そしてニヒルでクールでユーモラスでやがて悲しいセリフ回しは、心にひっかかってなぜだか忘れることができず、いつのまにか私は先生の作品のとりこになっていました。
きっと、そんな自称マニアックなファンが大勢いたことだろうと思います。
なかでも「サンプルキティ」は、読む人間の心をえぐる怪作でした。
そんな明智抄先生が、去る八月お亡くなりになったそうです。
思えば、先生が花とゆめに連載をなさっていたのは、昭和の話。夭折と言うほどではありませんが、惜しい人が逝ってしまわれました。
御冥福をお祈りいたします。