ある日の、医師と医学生の会話

息子がちょうど今、骨学実習をやっているそうです。

「なんか、納得がいかないんだよね。閉鎖孔ってあるじゃん」

閉鎖孔というのは、恥骨と坐骨に囲まれた穴のことです。

よく骸骨の絵にも出てきますよね。

「閉鎖孔って名前、そもそもおかしくない?」

息子が言うには、閉鎖してたら孔(あな)じゃないだろ、と。

まあ実際には、骨の状態では孔(あな)が開いていて、生体では靭帯で閉鎖されているんですけどね。

とりあえず、先達として教えを垂れてあげました。

「そういう矛盾してる名前ってのはあるもんさ。よくほら、『清純派AV女優』っていうだろ。よく考えるとおかしいんだけど、もうそういうモンとして認識されてるからしょうがないってパターン」

「あー、 『素人AV女優』みたいな? 素人だったら女優じゃないし、女優だったら素人じゃない。どっちかはっきりしろ、みたいな?」

「まあ、そういう素人物は大概仕込みの女優さんらしいぞ。あとはそうそう、 『ニューハーフAV女優』ってのもその一種だな。ニューハーフって時点でもうすでに女優じゃないし」

「なるほどねぇ。じゃあ、閉鎖孔ってのもアリなんだ」

素晴らしい。全て『AV女優』を使った比喩だけで意思の疎通ができました。

さすがは医学の道を志す者同士ですね。