ピアス・デビュー

dr_mori2007-03-23

時節柄、うちのクリニックにも、はじめてピアスをあけるという人が沢山いらっしゃいます。

最近は、高校生でもピアスOKというところもあるようで、15-6歳の女の子も結構多いです。

ネットの掲示板で、時々「ピアスはどこであけてもらうのがよいですか?」
というのを目にします。
もちろん、正解は「皮膚科の病院で」となるわけですが、

そういうのを見るたびに、私は、私のピアスデビューのことを思い出します。

今では、一般的なファッションのピアスですが、私が高校生の頃はそうではありませんで、ピアスというのは不良のやるものでした。

(20年も前の昔だったからか、長崎県の田舎町だったからか、おそらくその両方でしょう。)

私は、当時、学校の近くに下宿をしていました。
学校では、完全に優等生だったのですが(笑)、バンドをやっていたせいで、不良っぽい生徒にも付き合いがありました。

その中に、サイトー君がいました。彼は、そっち系のグループの中では中心人物で、めったに話したこともありません。彼がいきなり、学校の廊下で

モリカツ(私のことです)、今度ピアスあけてよ。」

その時すでに、私は医学部志望でしたし、家が皮膚科医です。
サイトー君は、それで、そんなことを言ったんだと思いますが、

しかし!
肉屋さんの息子だからって、牛がさばけるわけじゃないし
パイロットの息子だって、そらがとべるわけじゃないでしょう。

でも、サイトー君は、そんな理屈が通用する人ではありません

「お、お、おK」私には、そう返事するのしかありませんでした。

その晩、わたしは下宿の部屋で頭をかかえました。
今と違って、インターネットも無く、ピアスのあけ方なんて調べようもありません。

だからって、いまさら出来ないとはいえないし、やってみて途中で失敗なんていうのは一番の最悪です。

こうなったら、できることはただひとつ

 「じぶんの耳にあけてみる」 

予習を欠かさない優等生ならではの解決法です。

早速、わたしは、街に出て、やすもののピアス安全ピンマキュロンを買ってきました。

20年前の田舎には、
ファーストピアスとか金属アレルギーという現代の常識は存在していませんでした。

耳たぶを消毒して、安全ピンを右耳に押し込みます。
痛いですが、サイトー君やそのお友達の皆さんの顔を思い出すと、全然耐えられる範囲です。

耳たぶの後ろに針が出てきたんで、抜いてピアスを入れようと思ったのですが、
穴が小さいらしく、まだ通りません。
そこでもう一回、安全ピンに付け替えて、
「えいや。」と力を込めました。すると、

「ブチッ!」

という大きな音がして、耳たぶに安全ピンが貫通しました。

ちょっと血が垂れてきて、脱力感というか、やっちゃった感がいっぱいです。

結局、その日はもう何もする気にもならず、耳に安全ピンをぶらさげたまま、一日を過ごしました。

さて、それからどうなったか?サイトー君に無事にピアスをいれることが出来たのか?
じつは、全く記憶が無いんです。
記憶がないってことは、サイトー君の「ピアス空けてよ」というのは単なる気まぐれで、いつのまにかなかった話になったのかもしれません。

ちなみに、サイトー君はいつの間にかテレビでみかけるようになり、芸能人になっていました。(写真)

で、「ピアスをどこであけるのが良いか?」です。

医者の立場としてでなく、一個人としては、 「若者だったら、失敗してもいいから自分であけてみたら?」 とか、 「こいつに頼んで失敗するんならしょうがないっていうくらいの友達っていないの?」 とか、無責任なことを思ったりします。

今回は落ちなしです。